孔枝泳/佐原ミズ「私たちの幸せな時間」は心と心が紡ぐ切なくも美しい物語
自殺未遂をくりかえす女と、死刑囚の男。
生きることから遠くにある2人が出会い、生まれた思いとは――。
――生きたい。
切実な思いが胸をつく物語である。
【あらすじ】
元ピアニストの財閥令嬢でありながら、母との確執で自殺未遂をくりかえす樹里。
教誨師をする叔母のすすめで、精神科のカウンセリング代わりに死刑囚である佑と会うことになる。
3人の命を奪い死刑囚となった佑。
彼は樹里に、不幸な生い立ちにより荒れ果てた、むきだしの悪意をぶつけてくる。
だが樹里は、そんな彼の心に自分と似た暗い闇を感じていた。
立場はちがっても、傷つき、闇をかかえた心は同じ。
やがて2人は心を通わせはじめる。
そして樹里は、彼に自分がピアニストを辞めた本当の理由を話す…。
【カット】
・孔枝泳/佐原ミズ「私たちの幸せな時間」(新潮社)
生きられない人間と、生きたくない人間。
命に背を向けた2人だったが、言葉を交わし、心を触れあううちに考えが変わっていく。
死を待つだけの人間と、生を望まぬ人間。
命に背を向けた2人だからこそ、率直に心の痛みを吐き出すことができた。
木曜午前10時――。
面会時間という名の、孤独で傷つけられた2つの魂が出会う「幸せな時間」。
自分ではない“あなた”という存在により、赦し、赦され。
過酷な運命に刃向かうための、少しの希望を得ることができた。
しかし、それはむしろ新たな苦しみを生んだ。
佑は死刑囚…いつその命を絶たれるかわからない存在なのだ。
「生きたい」という希望は、皮肉にも「死」という別れを意識することでもあったのだ――。
いつ訪れるかわからない、別れの時まで。
時間を慈しむかのように、ふたりのやり取りは続く。
だが、唐突に終わりの時がやってくる。
佑も樹里も、はじめは“死”を望んでさえいた。
お互いの存在を支えに、初めて“生”の尊さに気づき、心から望んだとき。
“死”という別れがやってきた。
繊細なふたりの感情の糸で織りあげた、切なくも美しい物語。
極限の状態で出会ったふたりが、心と心の触れあいをする…奇跡のような物語に、熱いものがこみあげた。
佐原ミズの繊細なタッチが光る佳作。
機会があれば、ぜひ読んでいただきたい作品です。
【おまけ】
原作の小説は、韓国の作家さんが描いた物語。
原作は読んでいないのですが、まんが版では登場人物は日本名でしたし、まったく違和感なく読めました。
小説版もちょっと気になるところですね。
韓国では映画にもなっていたようです。
かなり有名な作品だったんですね…。
(そういえば劇場で予告編を見たような気も)
生きることから遠くにある2人が出会い、生まれた思いとは――。
――生きたい。
切実な思いが胸をつく物語である。
【あらすじ】
元ピアニストの財閥令嬢でありながら、母との確執で自殺未遂をくりかえす樹里。
教誨師をする叔母のすすめで、精神科のカウンセリング代わりに死刑囚である佑と会うことになる。
3人の命を奪い死刑囚となった佑。
彼は樹里に、不幸な生い立ちにより荒れ果てた、むきだしの悪意をぶつけてくる。
だが樹里は、そんな彼の心に自分と似た暗い闇を感じていた。
立場はちがっても、傷つき、闇をかかえた心は同じ。
やがて2人は心を通わせはじめる。
そして樹里は、彼に自分がピアニストを辞めた本当の理由を話す…。
【カット】

・孔枝泳/佐原ミズ「私たちの幸せな時間」(新潮社)
生きられない人間と、生きたくない人間。
命に背を向けた2人だったが、言葉を交わし、心を触れあううちに考えが変わっていく。
死を待つだけの人間と、生を望まぬ人間。
命に背を向けた2人だからこそ、率直に心の痛みを吐き出すことができた。
木曜午前10時――。
面会時間という名の、孤独で傷つけられた2つの魂が出会う「幸せな時間」。
自分ではない“あなた”という存在により、赦し、赦され。
過酷な運命に刃向かうための、少しの希望を得ることができた。
しかし、それはむしろ新たな苦しみを生んだ。
佑は死刑囚…いつその命を絶たれるかわからない存在なのだ。
「生きたい」という希望は、皮肉にも「死」という別れを意識することでもあったのだ――。
いつ訪れるかわからない、別れの時まで。
時間を慈しむかのように、ふたりのやり取りは続く。
だが、唐突に終わりの時がやってくる。
佑も樹里も、はじめは“死”を望んでさえいた。
お互いの存在を支えに、初めて“生”の尊さに気づき、心から望んだとき。
“死”という別れがやってきた。
繊細なふたりの感情の糸で織りあげた、切なくも美しい物語。
極限の状態で出会ったふたりが、心と心の触れあいをする…奇跡のような物語に、熱いものがこみあげた。
佐原ミズの繊細なタッチが光る佳作。
機会があれば、ぜひ読んでいただきたい作品です。
【おまけ】
原作の小説は、韓国の作家さんが描いた物語。
原作は読んでいないのですが、まんが版では登場人物は日本名でしたし、まったく違和感なく読めました。
小説版もちょっと気になるところですね。
韓国では映画にもなっていたようです。
かなり有名な作品だったんですね…。
(そういえば劇場で予告編を見たような気も)
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